古川コラム

ふるさと納税 国対地方の結末

ふるさと納税裁判は泉佐野市の勝利

 個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。平成30年度は全体で約2,332万件、約5,127億円の寄附がありました。

 2019年6月に改正が施行され、総務大臣による指定を受けていない自治体への寄附は、ふるさと納税の対象外となりましたが、過去の実績により指定外となっていた泉佐野市が裁判を行い、高裁では敗訴したものの、2020年6月30日最高裁判決により、「総務省の告示のうち、過去の募集方法を考慮するとした部分について違法で無効」と判断され、除外決定は取り消されました。

 

 

法の遡及適用は相手が地方自治体でもダメ

 この騒動は、そもそも泉佐野市が返礼品提供について定める法令上の規制が存在しなかった頃に、寄附に対する返礼品の価値がとても高いものを提供していたことが発端です。この「過去の行い」に対して、制度改正時に明示もせず罰則的な意図を持って不指定自治体とした「総務省の後出しじゃんけん」について、判決は「法の遡及適用となるからダメでしょう」としたもので、個人や法人に対する税法等と同じ解釈であり、報じているメディアによっては「ごく普通の論理構成」と評されています。

 逆に、なぜ高裁判決は総務省支持だったのか、と首をひねりたくもなります。

 

 

ただし、褒められたものではない

 最高裁判決文の最後に、補足意見として裁判官のコメントがあります。返礼品の競争を加速させ、総務省の「技術的助言」を法的拘束力がないとはいえ無視してきた泉佐野市について「泉佐野市のやり方は褒められたものではない」といった趣旨の、説教じみた風味がある文章です。「理はあるがマナーはないよね」という、裁判官たちの渋面が浮かびます。

 また、「ふるさと納税は、寄附制度としての面と納税であるという面があり、そのバランスを取ることは必要」といった、さらなる法整備を促す感想も別の補足意見で述べられています。ふるさと納税周辺の制度設計については、議論の余地がまだまだありそうです。

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